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コラム

「こうあるべき」を見直して

日々の暮らしの中で、私たちは様々な感情に彩られて毎日を送っています。楽しい、嬉しいなどポジティブな感情ばかりなら、これ以上幸せなことはありません。でも、現実はそうはいかないもの。近年は、感情を調整し適切に表現できなければ、未熟な人と評価される風潮もあります。例えば、思い通りに事が運ばず不安や失望感に覆われて、怒りが湧いてくることがありますよね。怒り自体はごく自然な感情ですが、感じたまま周りにぶつけると大人げないと思われてしまうかもしれません。どうすればコントロールできるでしょうか。

それにはまず、怒りが自分のどんな思いに反応して湧いたかに気づく必要があります。同じ場面でも強く怒る人とそうでもない人がいるように、怒りを感じるポイントは人それぞれ。自分にとって当たり前の「こうあるべき」という期待を傷つけられたために、怒りが湧くのです。特に疲れている時や余裕がない時に自分の「べき」に触れる出来事があると、つい過剰反応していつも以上に怒りを伴った表現をしてしまいがちです。そんな時でも少しは怒りをコントロールできるように、自分にはどんな「べき」があるのか、一度振り返って探してみてはいかがでしょう。

イライラを感じたり腹が立った場面を思い出し、なるべく沢山書き出してみてください。それらを俯瞰すると、何か共通するテーマが見つかるのではないでしょうか。例えば、ルールには従うべき、時間は守るべき、人には親切であるべきetc。きっと自分のお怒りポイントが見えてくるはずです。自分にとって当たり前の「べき」を台無しにされた失望が、怒りに繋がっているのですね。ただ、どれも決して間違いではありません。そこにこだわりがあるからこそ仕事や家事をうまく回し、自分らしさを発揮している側面もあります。

そんな自分らしさを表す「べき」ではあるけれど、数が多かったり、こだわりが強過ぎたりすると、どうしてもイライラが生じやすくなります。自分を支えるその「べき」も、ライフステージが変わると役割を終えたり、環境の変化によって合わなくなったりするものです。なんだかイライラするな、いちいち腹が立つな…もしそう感じることが多ければ、そろそろ「べき」を見直すタイミングなのかもしれません。自分らしさまで手放す必要はなくとも、ちょっと重要度を下げ「まあいいか」と思える範囲を広げていく。そんなふうにイライラを減らしながら、しなやかに彩り豊かな日々を取り戻していきましょう。

(御池メンタルサポートセンター 臨床心理士 内田千智)