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コラム

「報・連・相上手な職場をつくる一言」

職場では、トラブルこそ一人で抱え込まずに早いうちから報告・相談をしたり、困りごとを共有したりすることが必要不可欠です。相談された側として「どうしてもっと早く報告しなかったの?」「相談してくれていたらよかったのに…」と思ったり、あるいは相談する側として「今は先輩も忙しそうだし、これぐらいは自分でやらないと…」等と思ったりした経験、ありませんか?

これには人がもつ「他者が自分と同じように心をもつ存在だと認識し、その心の状態の推測から他者の行動を理解する能力」が関わります。この能力があるために、人は直感的・瞬間的に「あの人は今こう思っただろうな」「~のためにこうしてくれたんだろうな」と他者の心情をおもんぱかることができるのですが、一方でそれは“遠慮”も生み出します。「お手伝いしましょうか?」「私が~しましょうか?」と申し出られても「いえ、大丈夫です」等と断ってしまうのは、他者の気持ちを思う能力があるために、遠慮や申し訳なさが先立つからなのです。

この問題に対して、職場の対人関係においては“自分は職場の役に立っている”という認識(貢献感)をもっていると、他者に助けを求める際にためらいにくいとされます。家族や友人関係と違って、職場の対人関係においてはギブアンドテイク、等価交換がなされやすいのです。

つまり、自分は職場で役に立てている、職場にしっかり貢献できているという認識があれば、他者に助けを求めやすく(お返しをもらっても良いだろうと思う)、逆に自分はこの職場で役に立てていない、助けてもらってもお返しができないという認識であれば、本来助けてほしい場面であっても、つい遠慮や抑制が生じてしまうようなのです。

とはいえ、こと仕事に関しては、何でも一人で抱え込んでしまうのではなく、困りごとやトラブルを早いうちから共有しておくことが早期解決のカギです。例えば、「ありがとう、助かったよ」等のほんの一言を掛け合うことが、職場のメンバーの「自分はここで役に立てている、貢献できている」という所属感や貢献感を育み、遠慮なく援助要請や、報・連・相のできる職場環境を作ることにつながるといえるでしょう。

(御池メンタルサポートセンター 臨床心理士 藤井 彩)