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日本産業ストレス学会 学会誌『産業ストレス研究』23巻4号

 『産業ストレス研究』に弊会臨床心理士が執筆した記事が掲載されました。
 日本産業ストレス学会 学会誌『産業ストレス研究』23巻4号

シンポジウム(2)「職場のメンタルヘルスの第一次予防 ~職場が元気になる効果的アプローチ~」

人間性心理学の立場からうつ状態を考える ~日常生活におけるフォーカシング的態度を中心に~

永野 浩二 著pp.289-296
追手門学院大学心理学部准教授,一般財団法人京都工場保健会非常勤カウンセラー(臨床心理士)

抄録
人間性心理学的な立場では,「うつ状態」を「良い」「悪い」と単純にはみなさない。「予防した方がよいもの」とも決めつけない。うつ状態は,個別性のあるプロセスである。部分としては困ったことでも,全体的にはある機能を果たしている正常な反応と考えられる。そこに安全な形で関わり続けることで,しばしば創造的な生成過程が生じる。創造的なプロセスが生じるために,近年,「日常生活におけるフォーカシング的態度」(福盛・森川,2003)と呼ばれるある心理的な構えが注目されている。ここ10年来の「フォーカシング的態度」研究から示唆されていることは,以下の点である。①この態度を持つ人たちは,質問紙における抑うつ状態や不安,身体症状などのネガティブな反応得点が低い。②また,幸福感や自己実現的態度,レジリエンス,モチベーションなどのポジティブな反応得点が高いという特徴を持つ。③生き生きとした状態とは,単なるポジティブな感情を感じている状態を指すのではない。ポジティブな状態,ネガティブな状態双方に開かれ,そこに関心を向け,一時的にうつ状態や心身の不調を体験しつつも,そこから意味を汲み取って変化していく状態と考えられる。


シンポジウム(4)「ストレスチェック制度の効果的活用を考える」

外部機関の立場より:集団分析結果を活用した職場環境改善の取り組みについて

水本 正志 著pp.325-331
一般財団法人京都工場保健会専任カウンセラー(臨床心理士)

抄録
2015年12月からストレスチェック制度が施行された。筆者は生産性向上まで包括した一次予防を主目的とする本制度において,現時点では努力義務として位置づけられている集団分析結果の活用が,その目的を達成するための鍵になるのではないかと考えている。

筆者が所属している機関では,「職場ケア」という新しい用語を造り,働きやすい職場づくりを推進しようと試みている。本シンポジウムでは職場ケア・プログラムとして当会内で位置づけている,①集団分析結果を活用した管理職研修会「職場ケア管理職研修会」,②集団分析結果を活用した管理職面談「職場活性化面談」,③参加型職場環境改善活動「職場ドック」の特徴について紹介するとともに,職場ケア・プログラムを実際に活用しながら一次予防の取り組みを積極的に展開しているある事業場の事例を紹介した。