皆さん、食べることを楽しんでいますか?今日のご飯はどうしよう、何を食べよう、何を作ろう、毎日食事についてあれこれ考える時間は案外長いものですよね。食事は日々の楽しみであると同時に、栄養補給の手段でもあります。とはいえ、どんな栄養を摂取しているか、常に意識している人はそれほど多くないでしょう。毎日ご飯を楽しく食べられる、その幸せを感じること自体、実は栄養が大きく影響しているとご存じでしょうか。体だけでなく、心の働きにも栄養が深く関係していることが、近年の研究で少しずつ明らかになっています。
皆さんもセロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなどの言葉を耳にしたことがあるでしょう。これらは神経伝達物質といわれるもので、脳内で作用しメンタルを調整してくれています。セロトニンは、幸福感や気分の安定、睡眠などに影響するため「幸せホルモン」と呼ばれています。ドーパミンは喜びや意欲、達成感などに、ノルアドレナリンは集中力や緊張感、積極性などに関与しています。
ストレスフルな毎日、これらが不足したりバランスが乱れた状態でいると、気分や感情調整の機能が低下し、ちょっとした刺激でもメンタル不調に陥る可能性があります。だからこそ、メンタルヘルスを保つために神経伝達物質がしっかり機能できる体でいることが大切です。
そして、これらの原料となるのが食物から摂取する栄養です。セロトニンの原料になるトリプトファンは、肉や魚、大豆、乳製品に多く含まれます。生成にはビタミンB群や鉄分などが不可欠で、分泌の際はカルシウムやマグネシウムも必要です。セロトニンは腸でも作られるため、腸内環境を整える食物繊維も大切です。こうして初めて幸福感を感じることができるので、肉や魚だけでなく、レバーや納豆、乳製品、青菜や海藻もしっかり食べましょう。また脳を守り、ドーパミンやノルアドレナリンの作用を助けるビタミンDは、青魚や鮭、キノコ類に豊富です。うつとの関連が示されているEPAやDHAは、特に青魚に多いので、サバやイワシも積極的に食べたいものです。
心身一如という言葉があるように、心と体は一体です。そこには栄養が深く関係しています。疲れた気分の時こそ、栄養のことも少し意識しながら、食べることをたっぷり楽しめるといいですね。
(御池メンタルサポートセンター 臨床心理士 内田千智)