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コラム

腸内環境は心身の状態を映す鏡

人の腸では、セロトニンなどをはじめとした神経伝達物質が40種類以上も合成されており、腸は「第二の脳」と呼ばれるほど、私たちの精神状態に大きく関わっています。近年の研究では、脳と腸が影響し合っていることが次々と明らかになり、「脳腸相関」という言葉を耳にする機会も増えました。

ストレスや過緊張の状態が続くと、脳と腸をつなぐ自律神経やホルモンが乱れて腸内で炎症が起きやすくなります。一方、下痢や便秘が主症状となる場合なども、焦燥感、気分の落ち込みなどの精神的な症状を併発することがあり、「過敏性腸症候群」の患者さんの多くが、不安やうつ症状を呈すとされています。

このように脳と腸は相互的に影響し合っており、腸内環境が精神状態に与える影響は大きく、日常的に腸内環境を整えることはそれだけでセルフケアとなります。

腸内環境を整えるための鍵は、腸内細菌である「善玉菌」と「悪玉菌」のバランスを調整することです。言葉のイメージどおり、善玉菌が優位な状態を保つと心も体も健やかな状態が保たれます。一方で、偏った食事や不規則な生活、ストレス、飲酒などは、悪玉菌を優位にさせることが知られています。

そこで今回は、腸内の善玉菌を優位に保つおすすめの方法を2つ紹介いたします。まず一つめは、生きた善玉菌である「プロバイオティクス」を直接摂取する方法です。ヨーグルトや発酵食品(味噌・納豆・漬物など)といったビフィズス菌や乳酸菌を含む食品を習慣的に摂取するとよいでしょう(乳製品が身体に合わない方は注意が必要です)。二つめは、腸内にもともと存在する善玉菌を増やす作用のある「プレバイオティクス」を摂取する方法です。食品成分としては「オリゴ糖」や「食物繊維」といわれるもので、これらの成分は野菜類・果物類・豆類などに多く含まれています。オリゴ糖は、大豆・たまねぎ・ごぼう・ねぎ・にんにく・アスパラガス・バナナなどの食品にも多く含まれていますので、これらの食材から自分に合ったものを選んで日々の食事に取り入れてみましょう。

腸内環境を整えることで心身の不調のすべてを解消できるわけではありませんが、日々の食事や生活習慣を見直すことで心身の健康を維持しやすくなります。腸の状態は、私たちの心身の状態を映す鏡となるため、「労いの言葉」をかけながら優しく労わってあげてください。

(御池メンタルサポートセンター 臨床心理士 浦野 幸一郎)