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コラム

音楽の力

音楽は心の健康に強力に影響しているという考え方が数千年の間存在してきました。「音楽は世界に魂を与え、精神に翼を与える(以下省略)」というプラトンの名言があり、彼の学徒はヒステリーや神経障害を治療するために音楽を使っていたと言われています。現代では音楽心理学という学問により音楽刺激による生体反応に関する研究がなされています。例えばマイナーコードはなぜ悲しい響きに感じるのか、また不協和音を聴くとなぜ良くも悪くも違和感を抱くのかなど。そしてこれらは万人に共通する人間本来のものなのか、あるいは文化的な背景が関係しているのか、解明されていない問題がたくさんあります。とはいえ、音楽を聴くと心に変化をもたらすことは確かです。今日では、音楽療法として、医療や福祉、教育現場などで音楽を用いたクライエントのQOL向上の支援が行われています。

さて音楽に触れる方法には、「歌う、演奏する」という能動的なものと「聴く」といった受動的なものがあります。今回のコラムでは後者の受動的アプローチにフォーカスしてみたいと思います。音楽療法的な聴き方のポイントとして、個人のニーズや目的に応じて異なるものがいくつかありますが、そのうちの二つご紹介します。一つは「環境を整えること」、もう一つは「意識的に聴くこと」です。できるだけ騒音のない静かな場所を見つけリラックスできる快適な環境を作ってください。そしてただ音楽を聞くのではなく、意識的に「聴く」ように心がけます。楽器の演奏や、歌であれば歌詞、リズムに注意を傾け「感じる」ことを重視します。その時のご自身の気分に合わせて曲を選んでいただければ構わないのですが、辛い時、悲しい時など先に進む元気がない時には、明るい溌剌とした曲よりも、ご自身の気持ちに寄り添うようなテンポのゆっくりとした、そして曲の途中にちょっとした間が入り一緒に留まってくれるような曲がおすすめです。例えばエルガーの「エニグマ変奏曲」。また、不協和音が心地よいスロージャズもいいですね。もし迷われたら、参考にしてみてください。

音楽はいくら取り入れても(おそらく)体に害はありません。時には心を整え、気持ちを落ち着かせてくれることもあります。生活の中に上手に音楽を取り入れ気分よく毎日を過ごしていただきたいものです。音楽は無添加のサプリメントなのですから。

(御池メンタルサポートセンター 産業カウンセラー 菅原 由佳)