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コラム

ステレオタイプにご注意を

少し前に、「おじさんはカワイイものがお好き。」というドラマが放送されていました。主人公はかっこよくて、仕事ができて、部下からの信頼も厚い40代の男性。でも実はかわいいものに目がないということを周囲に隠し、こっそりと自分が好きなキャラクターのグッズを集め、愛でる生活を送っています。主人公が自分の好きなものをオープンにできなくなったのには、過去に、周りの人に自分の好きなものや大切にしている気持ちを「男らしくない」と否定され、傷ついた経験が関わっているようでした。

社会の中では、ステレオタイプ(多くの人に浸透している、先入観、思い込み)のような見方や考え方がまだまだ根強く残っているように思います。血液型でその人の性格が決まるという考え方は、いまだに日本では根強く残るステレオタイプの一つです。人間は複雑な問題を効率的に判断しようとする際、物事を単純化する傾向があると言われています。複雑なはずの相手を理解するという過程を、一見わかりやすいステレオタイプを用いて行おうとした結果、偏見が生まれ、すれ違ってしまう、といったことが起こってしまうのです。

ドラマの主人公は、話が進むにつれ、同じ境遇の人や良き理解者を得て、自分の好きなもの、大切にしている気持ちを少しずつオープンにしていけるようになっていきました。「受け入れてもらえた」「わかってもらえた」経験は、その人の自己肯定感を高めたり、生きやすさにつながります。ダイバーシティという言葉が叫ばれる昨今、「ステレオタイプを鵜呑みにしていないか」「先入観にとらわれず、目の前にいる相手のことを大切に出来ているか」今一度振り返ってみてもいいかもしれません。それぞれ一人一人が大切にしていることを認め合いながら、全ての人が生きやすい社会を目指していきたいものです。
(御池メンタルサポートセンター 公認心理師 金谷 尚佳)