タイトルの漢字、読めたでしょうか?「かふくはあざなえるなわのごとし」と読みます。「幸福と不幸は表裏一体であり、かわるがわる来るものだ」という意味のことわざです。人生には良いことも悪いこともあり、一時の状況に振り回される必要はない、という教訓を含んでいます。
生きていると、いろいろなことが起こります。今日と同じような明日が続いていくものだと思いながら生活していても、急なトラブルに見舞われたり、思いもよらない病を得たり、途方に暮れるような困りごとや悩みを抱えることもあるでしょう。ビジネスの世界においても同様です。特に変化の激しい昨今の市場環境では、企業経営も個人のキャリアも、長期的なビジョンを持ちにくくなっているのではないでしょうか。
比較的新しいキャリア理論として、1999年に、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が「計画的偶発性理論(planned-happenstance theory, プランド・ハプンスタンス理論とも呼ばれます)」を提唱しました。「キャリアの80%は、予期しない偶然の出来事によって形成される」という理論です。先に決めた目標にこだわりすぎることなく、今、目の前にある課題やチャンスに、柔軟かつ懸命に取り組むことが大切である、と説いています。
そう言われてみれば、今の仕事に就いていること、今の会社にいること、今興味があること。ほとんどのことは偶発的な出来事がきっかけなのかもしれません。いつも主体的に自分が選択しているようで、実はさまざまな偶然や運命の果てに今がある、とも言えそうです。そのように考えてみると、仕事でも人生でも、仮に今が最悪な状況だと思っていたとしても、実は大きな転機の前触れなのかもしれませんね。
シェイクスピアは「逆境が人に及ぼすものほど美しい」という名言を遺しました。古来、人は困難に出くわしながらも、一筋の希望を頼りに常に新たな道を拓いてきたのです。人が真摯にその可能性を探るとき、それは次の偶発を含んだ新しい縄を手繰り寄せているのでしょう。
(御池メンタルサポートセンター 臨床心理士 藤井 彩)