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コラム

左巻きのカタツムリ

 雨の季節に出会うカタツムリ。貝殻の螺旋(らせん)に左右があるのをご存じですか?カタツムリは元々右巻きで、巻き方が違うと体の構造上交尾ができず、突然変異の左巻きは子孫を残すには圧倒的に不利ですが、カタツムリを主食とするヘビは右巻きを食べやすいよう下あごが進化しており、左巻きは捕食を免れ、生き残る割合が高まるという進化のストーリーがありました。彼らには、交尾や捕食という生存に直結する出会いの折、違和感はなかったのでしょうか?

 年度が替わって2カ月余り、仕事を通して今までとの変化や違いに気づく時期ではないでしょうか。組織の戦略や方針、新人や異動等人的環境も変化。特に人の変化には、業務に求められる価値観、業務の進め方や段取り、事前事後のコミュニケーション等、ソフトな変化が伴いやすく、「違和感」を抱くことも多いように思います。とはいえ、多忙な働く人は、既に変化の問題解決に動き出しておられるのでしょう。問題に焦点を当てた行動は、ストレスの視点で考えた場合も対処の王道です。問題が改善すれば、問題に関わるストレスも軽減し、仕事も円滑に進みます。ただし、その行動は思いの外、心身共に大きなエネルギーを使います。とりわけ、対人に関わる内容は、相手がある故に自分の描く改善には時間がかかることや、うまく進まないことも多いため、一層ストレスや疲労が高まることもあり得ると懸念されます。

 大切なのは、問題だけでなく自分の気持ちにも焦点を当てること。仕事や人という「外」への「違和感」だけでなく、自分の「内」なる「違和感」にも目を向けてみましょう。違和感には、伴って湧いてくる感情があるはず。例えば、何度教えても理解が進まない人へのイライラと同時に離職を防ぐ配慮もしてクタクタ…。そんな感情をスルーせず「今こんな気持ちやなあ」と感情に気づき、大切に扱えば、少し冷静になって気分を切り替える方法を考え、その状況や相手の立場を振り返って考える、心の余白もできるかもしれません。内外の違和感を大切に扱うことで、問題解決へのアプローチや方法も、気分転換や他者への接し方にも、多様さや幅が生まれます。違和感の受容が、ご自身や職場の進化のストーリーにつながればと思います。

                                           (御池メンタルサポートセンター 臨床心理士 岸田 敬子)