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コラム

言葉が心をつくる

皆さんは心にある感情が芽生えた時、それを言葉にしていますか。そんな余裕を持てないことが多々有るかもしれませんが、しばらくたってから、また少し立ち止まることができたら、「嬉しい」「楽しい」「悲しい」「腹立たしい」などシンプルな言葉であらわしてみてください。そしてそれに慣れてきたら今度はもう少し詳しく表現してみましょう。

米国ノースイースタン大学の神経学者であるリサ・フェルドマン・バレット氏は自身の著書「情動はこうしてつくられる──脳の隠れた働きと構成主義的情動理論 」において、「感情の粒度」を上げることを提唱しています。「感情の粒度」とは、例えば「幸せ」という感情を「希望に満ち溢れる思い」とか「天にも昇る心地」「穏やかな気持ち」など、どれくらい感情を細かくまた詳しく表現しているかの度合いを示す言葉です。感情の粒度が低いと、例えば不快な感情をただ「ヤバい」とだけ表現することになり、自分の感情が「焦り」なのか「悲しみ」なのか「恐れ」なのか分からないため脳が無駄にいろいろな対策をとろうとしてストレスが高まります。一方、感情の粒度を上げ、自身の気持ちをより深く認識することができれば、ストレスを軽減し、より満足度の高い生活がおくれます。脳は今まで経験した感覚・感情を覚えているので、自身の中で湧き起った思いをより効果的に分類すれば、心が落ち着き、自信をもって適切な対処がはかれるのです。

ただ、それだと経験したことのない感覚に出会うと戸惑ってしまいますね。それでは、未知なる感情を予習してみるのはどうでしょうか。それにはまず語彙を増やすのが一番です。これまであまり興味のなかった書物を読んで新しい言葉を発見したり、外国語を学ぶのもひとつの手です。外国語を学ぶと不思議と母国語の語彙が増え、自身の文化にはない感情に触れることもできます。

そして感情の粒度を上げるための方法として、似た表現の違い、例えば、「がっかり」と「意気消沈」の違いなどをじっくり考えてみるのはいかかでしょうか。俳句や短歌をつくってみるのもいいですね。俳句の五七五は情景を、短歌の下の句、つまり、五七五七七の七七の部分は感情をあらわすと言われています。自身の感性を磨いて、感情の引き出しを増やし未来に備えましょう。

初夏の日差しの中、また、雨の日は雨音に耳を澄ませて、今ご自身から湧き起った気持ちに注意を向けてみましょう。ポジティブな感情もネガティブな感情もご自身の大切な感情です。どうぞしっくりくる言葉で表現してみてください。

(御池メンタルサポートセンター 産業カウンセラー 菅原 由佳)